No.27 Analysis of the Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion (“SHEP”) Intervention on Income and Food Security in Ethiopia
JICA緒方研究所について
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SHEPは、小規模園芸農家の「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、営農や栽培スキル向上によって農家の園芸所得を向上させることを目指している。今回の研究でSHEPは小規模園芸農家の収入と食料安全保障を向上させており、特に、SHEPアプローチで取り組んでいる男女共同での意思決定は世帯の食料安全保障に正のインパクトを与えることが示唆された。評価には、GISデータを用いて園芸生産と商業化に欠かせない農業の特殊性である土壌特性、傾斜、標高、灌漑の利用可能性、市場の特殊性である主要都市までの距離と道路密度の6つの項目を基準に比較対照地域を特定した。さらに傾向スコアマッチングで共変量によるバイアスを小さくすることでプロジェクト対象地域農家に限りなく近い対照農家との比較を可能とした。調査は、エチオピアのオロミア地方における、610件の農家を対象とした。まず、介入グループの園芸収入平均(29,889ETB、560.6USD)と食料安全保障(64%)は、他のグループより高かった。これはオロミア州ジンマの純農業収入平均である430米ドルよりも処理グループの園芸収入平均は130.6USDより高いことを示している。このように、介入グループは、国の小麦フラッグシップ・プログラムの下で積極的に園芸作物を作れないという状況下でも、対照グループや純粋対照グループよりも統計的に高い園芸収入平均を得ていた。さらに、介入グループは世帯の食料安全保障が確保されている一方で、対照グループと純粋対照グループでは、深刻な食糧不安の状況に直面している農家の割合が高かった。また、プロジェクトの男女共同参画研修により、受益世帯間でより夫婦共同で意思決定が行われており、食料安全保障に貢献していることがデータから見えてきた。最後に、SHEPの広範な研修カリキュラムは、気候スマート農業(CSA)の原則に沿った農業リスク適応戦略の採用を提唱しているが、我々の調査結果は、これらのCSA対策の採用と世帯の食料安全保障への傾向の向上との間に顕著な相関関係があることを示唆している。本研究を通じ、零細農家の所得と世帯レベルの食料保障を向上させるためには、エチオピアにおいてはSHEPのようなアプローチが有効であると考えられる。
キーワード: 園芸商業化、傾向スコア、SHEP、空間データフィールド選択法
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