jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

第8回保健システム研究グローバルシンポジウム(HSR2024)でJICAサテライトセッションを開催(その1)

2024.12.25

2024年11月18~22日に、グローバルヘルス分野で権威ある国際シンポジウムThe 8th Global Symposium on Health Systems Research 2024(HSR2024)が日本で初めて長崎県で開催されました。

メインセッションに先立ち、11月18、19日にはサテライトセッションが開催され、JICAは8つのサテライトセッションを企画しました。11月18日に開催されたセッションの内容は以下の通りです。各セッションの動画もご覧になれます。

【セッション1】
移行期のガーナにおける持続可能な国家保健プログラムの推進

低所得国から中所得国へ移行する国は、保健システムの持続性の確保という課題に直面しています。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の牧本小枝 主席研究員がチェアを務めた本セッションでは、ドナーの支援によるプロジェクトから持続的な国の制度への移行に成功した事例として、ガーナでの母子手帳導入の事例を用いて、ガーナ政府、JICA、世界銀行、東京大学などからの登壇者がそれぞれの役割を報告し、WHOとResults for Development Institute (R4D)の登壇者がコメントしました。ガーナ母子手帳はプロジェクト終了後の現在も、自国予算にてすべての母子に無償で配布され、健康記録、出生登録、国民健康保険ファイルとして広く活用されています。政府の主体性、ドナー機関の連携、国内資源の動員などを重視する国際保健のために提言された「ルサカ・アジェンダ」の実施が移行を促進できることが示唆されました。

【セッション2】
保健政策と実践の狭間で:ラオスの保健医療施設におけるサービスの質向上の取り組み

ラオスでは、2025年までのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて、「保健セクター改革戦略2021-2030」が実施されています。本セッションでは、JICAが長年協力を続けてきた分野である国民健康保険、質の高い保健人材開発、医療施設におけるサービスの質の改善などに関し、政策立案と実際の現場におけるギャップについて、ラオスの事例の報告が行われました。オープンディスカッションでは、アフリカやアジアからの参加者との意見交換も行われました。

【セッション3】
グローバルヘルスにおけるポストパンデミック・ポリクライシス時代の保健システム強化: Lancet Commission on Investing in Health (CIH) からのメッセージ

2024年10月に発刊された「Global Health 2050: the path to halving premature death by mid-century 」は、新型コロナウイルス感染症などを含む近年の情勢変化を踏まえ、2050年までに早期の死亡を50%低減するため、健康への投資に関する提言をまとめたLancet Commission on Investing in Healthによる3冊目の報告書です。本セッションでは、同報告書に貢献したJICA緒方研究所の牧本小枝 主席研究員がチェアを務め、日本、米国、ノルウェーの4人の研究者から同報告書の7つのメッセージ、保健開発援助、パンデミックの備えなどの提言を発表しました。ディスカッションでは、国レベルでの実施を考える場合の保健政策・システム研究による分析の必要性や、二国間援助の役割など、多様な意見交換が行われました。

【セッション4】
未来への投資:健診を通じた子ども、青少年、養育者の支援―人生の最初の20年間における健康、発達、ウェルビーイングのために

「小児の定期健診のためのガイド」(2023)を作成したWHOは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)における健診の意義を説明しました。日本の子ども家庭庁が1ヵ月児と5歳児健診、インドネシア保健省が6ヵ月健診、タイ公衆衛生省が就学前健診を例に挙げ、母子手帳を活用した各国の乳幼児健診について報告しました。インドネシアでの試行を支援したJICAのプロジェクト専門家は国間の類似点・相違点から各国の文脈でデザインする必要性を、UNICEFは保健システムが“Survive(生き延びる)”に加え“Thrive(生きて成長する)”に取り組む必要性を、シェラレオネからの参加者は地域を超えた母子手帳の可能性を述べました。全ての子どもに特定のタイミングで健診の機会を提供することは、強靭な社会に必要な投資であることが確認されました。

セッション4の動画は以下からご覧になれます。

【セッション5】
母子の健康のための家庭用保健記録の実施強化

WHOは、母子の健康のために家庭用保健記録を活用することを国際指針 (2018)で推奨しています。各国の実施上の課題への取り組みとして、WHOとUNICEFとJICAは、「家庭用保健記録のための実施ガイド 」(2023)を作成しました。2種類の仮想シナリオを用いた体験型ワークショップを通じて、セッションの参加者は、家庭用保健記録の活用のための8要因(リーダーシップ、コーディネーション、内容、ロジスティックス、予算、保健医療従事者、家族、モニタリング)について分析し、改善案を検討しました。母子手帳の全国展開前の国(シェラレオネ)と、長年使用する国(日本)の登壇者からのコメントから、保健システムの中に母子手帳を位置付けることや使い手が価値を実感する重要性を確認しました。

セッション5の動画は以下からご覧になれます。

各セッションの登壇者の情報は、以下のイベント告知ページからご覧ください。
第8回保健システム研究グローバルシンポジウムJICAサテライトセッション(1日目)

また、JICAの母子手帳に関する取り組みは以下よりご覧いただけます。
日本発の母子手帳 世界へ | 事業について

関連する研究者

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
トピックス一覧

RECOMMENDこの記事と同じタグのコンテンツ